Abstract
日本の農村社会において技術指導ならびに関係者間のコーディネート業務を行っている普及指導員の役 割について検討した.近畿の普及指導員が回答した調査から,関連機関や農業者同士の連携など,コーデ ィネートに関わる普及活動が地域の問題を改善している可能性が示唆された.また,コーディネートに関 わる感情経験ならびに普及指導員の間の知識・技術伝達についても検討したところ,地域住民同士の信頼 関係が業務内で普及指導員の感じるポジティブ感情を高めること,さらには対人的スキルのある普及指導 員が評価され,そうした先輩の存在が普及活動にポジティブな効果をもたらすことが明らかにされた.日 本の農村社会において,人をつなぐ役割の効果と,普及指導員の持つスキルについての考察を行った. キーワード:普及指導員, 農村社会, コーディネート機能, ネットワーク 1. 問題 日本における人間関係や社会構造については,しばし ば「相互協調的」 「集団主義的」 「関係志向的」であると 指摘されている(たとえば北山 1) ,濱口 2) など) .周囲と の協調性を重んじるメンタリティーを作り出してきた一 つの要因は, 定住型で流動性の低い 「農耕文化」 であり, 関係志向や周囲に注意を向ける傾向を生み出してきたこ とが指摘されている(Nisbett 3) ) .農村社会においては, 変化の少ない安定した共同体のネットワークが構築され ており,そうした社会構造の中で有効に働く関係志向的 なメンタリティーが広く見られる可能性がある. しかし近年は農業人口の減少や,農業生産についての 課題が山積する中で,農業者である個人が新たな取り組 みに内的な動機づけを持って取り組むことが求められる 場面が増えてきた.しかし,そうした個人の判断による 意思決定とそれに基づく新たな取り組みは,関係志向性 をベースにする農村社会においては必ずしも容易ではな いであろう.さらには,集落営農や地域でのブランド作 りなどによる取り組みが求められるようになってきたが, そもそも定住型で流動性の低い農村社会においては,新 しいつながりの形成には大きな労力が必要であると考え られる. このような中,新たな取り組みについての個人の意思 決定に関わるような技術伝達を行うと同時に,地域のつ ながりの生成・維持や集落営農の支援(森本 4) ,上田 5) ) などを職務とするのが「普及指導員」である.つまり普 及指導員は,農業に関する高度な技術と知識の伝達を行 う「スペシャリスト機能」と,相互協調的な農村社会の 中でネットワーク作りの支援を担う「コーディネート機 能」の双方を期待されている(農林水産省 6) ) . スペシャリスト機能とコーディネート機能という異な る次元での役割を持つ普及事業の職務は,実際の農村社 会においてどのような形で実践され,どのような役割を 持っているのだろうか.本研究では相互協調的な農村社 会におけるネットワークの生成・維持を支援する普及指 導員のコーディネート機能を検討する. 加えて,本研究ではコーディネート機能に関わる業務 遂行に必要な要因として,普及指導員自身の業務上での 感情経験ならびにロールモデルについて明らかにする. 前者は普及指導員の動機づけが何によって高められてい るのかを,後者はコーディネーターとして農業者に働き かけるスキルが普及指導員の間でどのように評価され, 伝達されているのかを明らかにする.これにより,普及 指導員個人,あるいは普及指導活動全体におけるコーデ ィネート機能の持続可能性を検証する. 従来社会心理学が対象としてきた信頼形成, 合意形成, 説得的コミュケーション,リーダーシップなどの視点か らも,農村社会において人と人とを「つなぎ」 ,人の心を 「動かす」機能を果たすことを目指している普及指導員
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UCHIDA, Y., TAKEMURA, K., & YOSHIKAWA, S. (2011). THE COORDINATION ROLES OF EXTENSION OFFICERS WITHIN JAPANESE AGRICULTURAL COMMUNITIES. SOCIOTECHNICA, 8, 194–203. https://doi.org/10.3392/sociotechnica.8.194
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