Abstract
科学技術政策が科学技術イノベーション政策に転換して以来,研究開発プロジェクトに対して「社会実 装」が求められる機会は増加しているものの,実際の現場においてどの程度社会実装が進んでいるのかは きちんと把握されていないのが現状である.それゆえ本研究では,新たに設定した指標を用いて社会実装 を推奨する研究開発領域の成果の類型化を実施し,成果の進捗を把握した.その結果,約 4 割のプロジェ クトが社会実装フェーズに到達しており,想定以上に概念が浸透していることが判明した.あわせて、社 会実装と研究開発手法の新規性や成果の汎用性についての相関関係も考察した. キーワード:社会実装,類型化,アウトプット,生産物,研究開発段階 1. はじめに 1999 年にハンガリー・ブダペストで開催された世界科 学会議において,21 世紀の科学の機能として,知識生産 のための科学のみならず, 「どう使うのか」 に軸足をおい た「社会のなかの科学・社会のための科学」がうたわれ るようになった.こうした背景のもと,2000 年には当時 の科学技術庁において「社会技術の研究開発の進め方に 関する研究会」 が設けられ, 「社会の問題の解決を目指す 技術」 , 「自然科学と人文 ・ 社会科学との融合による技術」 , 「市場メカニズムが作用しにくい技術」として社会技術 を推進していくべきとの意見がまとめられた.これを受 けて,社会の具体的な問題解決を目指し,社会的価値を 創出する研究開発に対して支援を行う機関として, (独) 科学技術振興機構内に社会技術研究開発センター (RISTEX)が 2001 年に設立された. それから時代は進み,現行の第 4 期科学技術基本計画 (2011 年~)では,科学技術政策から科学技術イノベー ション政策の一体的展開への転換がうたわれるようにな っている.そこでは問題解決のために科学技術を戦略的 に活用し,自然科学のみならず人文科学や社会科学の視 点も採り入れ,科学技術政策に加えて関連するイノベー ション政策も幅広く対象に含めて,その一体的な推進を 図っていくことが示されている 1) .これは科学技術が従 来のシーズプッシュ型から課題解決型へ大きく政策転換 したことを表しているといえよう. 第 4 期科学技術基本計画以前から,問題解決のための 研究開発を推進してきた RISTEX は,いくつかの変遷を 経て,現在では研究成果を「社会実装」することで社会 の問題を解決することを研究実施者に対して求めている. このような研究開発助成の方針の明確化は世界的にみて もユニークであり,参考とする取り組みは他国にも少な い 2)3) .日本を含む 10 カ国を対象に RISTEX と類似の研 究開発助成プログラムの実態を調査した報告書によれば, ①社会問題の解決を目指すものであること,②自然科学 と人文・社会科学の知識の両者を活用するものであるこ と,③ステークホルダーの関与を求めていること,④成 果の社会への活用・展開(社会実装)を強く意識した取 り組みであることの 4 要件をすべて満たす研究開発助成 の仕組みは,全米科学財団(NSF)による「不確実性下 の意思決定支援共同研究プログラム」のみであると報告 されている 3) .さらに付け加えるならば,そもそも「社 会実装」という概念自体が,RISTEX の「社会技術」の 概念の議論から生まれた言葉であると報告されている 4) . 第 4 期科学技術基本計画の開始以降,科学技術政策が イノベーション政策と一体的に展開していく中で,科学 技術には社会の問題を解決する機能が従来以上に求めら れており,現在では内閣府が中心的事業として推進する 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の中で「社 会実装」 を目指すことが明記されるようになっている 5) . このように社会実装という言葉は様々に波及していると 考えられるものの,その定義や方法論は未だ曖昧なまま であり,また研究者への浸透度も十分ではない. 「社会技術」の定義に関しては,過去には,吉川 6) ,市 川 7) による社会技術の理念についての議論,また,社会 技術開発に係る人材育成の課題についての議論 8) ,平尾
Cite
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KAYA, A., & OKUWADA, K. (2015). INVESTIGATING THE COURSES OF IMPLEMENTATION BY DESCRIBING RESARCH PERFOMANCE. SOCIOTECHNICA, 12(0), 12–22. https://doi.org/10.3392/sociotechnica.12.12
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