1.は じ め に 銅製錬工程はマットを製造する熔錬炉とマットを粗銅に変換す る製銅炉の二つの工程からなり,過去の熔錬炉としては日本古来 の塊鉱処理を対象とした熔鉱炉,アメリカで発達し粉鉱処理に適 した反射炉,安価な電気を利用して北欧で行われた電気炉があっ た 1) 。二十世紀後半にはオートクンプ社ならびにインコ社の自溶 炉が開発され,従来の熔錬炉であった反射炉と熔鉱炉に置き換わ り,現在,転炉での製銅との組み合わせで主要な銅製錬法となっ ている。一方で,熔錬と製銅の連続化への試みも世界各国で行わ れた結果,三菱マテリアルが世界に先駆けて商業化に成功し,三 菱連続製銅法 (MI 法) として現在知られている 2) 。 マット熔錬工程では,銅精鉱中の鉄が酸化されてフラックスで あるシリカと反応してファイアライトスラグが生成する。 一方で, 銅はマット中に濃縮分離される。この際のスラグとマットの相分 離は,スラグ中への銅ロス (スラグロス) と直接的に関係がある ため工学的に非常に重要な問題である。銅製錬おける銅ロスは大 きく二つのタイプに分けられ,一つは銅がスラグ中に化学的に溶 解する化学的ロスであり,これは過去に活量測定や状態図作製等 の実験により熱力学的にほぼ明らかにされている。もう一つのス ラグロスの要因が,溶融マットの粒子がスラグ中に浮遊 (懸垂) することによる機械的ロスである。機械的ロスの低減のためには スラグとマットの分離機構を明らかにし,それらの分離を向上さ せる操業条件ならびにプロセス構成をとる必要がある。 本総説は,スラグとマットの相分離に関する粘度,表面張力や 界面張力などの物理的な要因,スラグ中のマグネタイトの影響, 各マット熔錬炉における相分離に関する状況とその対策に関して まとめたものである。 2.スラグ / マット相分離に関する物理的要因 銅精鉱の熔錬反応により生成したスラグとマットが相分離する セトリング段階においては,スラグ中に懸垂したマット粒子はス ラグ相内を沈降する必要がある。マット粒子の沈降速度は,以下 の式のストークスの法則で予測することができる 3) 。 …………………………………… (1) V : マット粒子の沈降速度 (m/s) g : 重力加速度 (9.8 m/s 2) ρdrop : マット密度 (3900 ~ 5200 kg/m 3) ρslag : スラグ密度 (3300 ~ 3700 kg/m 3) μslag : スラグ粘度 (Pa s (kg/ms)) φdrop : マット粒子径 (m) Table 1 にスラグ粘度を 0.1 Pa s,マット密度を 4500 kg/m 3 ,ス ラグ密度を 3500 kg/m 3 とした場合の,マット粒子の沈降速度を 示している。表より粒径が小さいと沈降速度は著しく低下し,こ れよりマット / スラグ相分離を促進させるためには,熔錬反応時 にできるだけ粒子径が大きいマットを生成させることが重要であ ることがわかる 3) 。 また,スラグ粘度も沈降速度に直接関係する。Table 2 に SiO 2-Al 2 O 3-CaO-FeO-Fe 2 O 3 系スラグに関してマット熔錬炉スラグ組成 In this review, we summarized the physical factors such as viscosity, surface and interfacial tensions of slag and copper matte affecting the separation between them in copper smelting furnaces. The situation of slag/matte separation and practical measures for keeping the good separability were also introduced. Research results about the matte suspension mechanism in slag by the influences of viscosities, surface tensions and interfacial tensions of slag and matte, and also harmful influences on the slag/matte separation by the magnetite precipitation and the practical measures to reduce magnetite in smelting furnaces were outlined.
CITATION STYLE
SHIBATA, E., & NAKAMURA, T. (2013). Situation and Problem of Slag/Matte Separation in Copper Smelting. Journal of MMIJ, 129(5), 171–176. https://doi.org/10.2473/journalofmmij.129.171
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