江戸時代は,急激な人口増加とその後の人口安定,また陸・海路による交易網の発達によって特徴づけ られ,コメや野菜や魚介類を主要な食物としていたと言われる。そのような江戸時代の人々の食性を,遺 跡から出土した人骨を用いて実証しようとするのが本研究である。伏見城跡遺跡(京都市)より出土した 江戸時代人骨および動物骨からコラーゲンを抽出して,炭素および窒素の安定同位体比を測定した。合計 で27個体(男性9個体,女性12個体,子ども6個体)の人骨を分析に用いた。それにより,伏見江戸時 代人の食性,その性差を検討することを目的とした。江戸時代の伏見の人々は,タンパク質源を淡水魚類 に強く依存した食生活, もしくは陸上生態系から得られるC3植物と海産あるいは淡水魚類などを主たるタ ンパク質源とする食生活を送っていた可能性を示した。江戸時代の都市では,食生活が米,野菜,魚介類 からなり,アワやヒエ,キビなどC4植物の消費が少ないとする古記録を考慮に入れると,後者の食生活像 が支持される。また,男性の炭素同位体比は女性よりも高く,より多くの海産魚類や貝類などを摂取して いた可能性がある。また,年齢が上がると子どもの窒素同位体比は下がる傾向があり,これは母乳の摂取 と離乳の開始に関連していると考えられる。
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Kusaka, S., Ikarashi, T., Hyodo, F., Fujisawa, S., & Katayama, K. (2011). Stable Isotope Analysis on Human Skeletal Remains from the Edo-period Fushimi Castle Site in Japan. Anthropological Science (Japanese Series), 119(1), 9–17. https://doi.org/10.1537/asj.119.9
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