Abstract
生物の表現型(かたち,行動,生活史など)に共通 原理・一般法則はあるだろうか?表現型を対象とした システム生物学はありえるだろうか? 20 世紀は生体 分子(遺伝子,RNA,タンパク質)の理解を深めた 世紀と言ってよいだろう.そのため個体内システムの 理解はすいぶんと進んだ.しかし,表現型の理解はほ とんど進んでいない. 表現型の知識体系は,動物学,分類学,生態学,進 化学などマクロ生物学の各分野に散在し一般的な記述 体系に乏しい.このことが個別論を促進し,普遍化を 阻んでいる.例えば,『汎用される形態要素群はモ ジュール構造を作りやすい』とか,『進化の過程で形 態要素を組み合わせる順序には制約がある』といった 共通原理の可否を議論することが難しい.表現型の抽 象的な記述が可能になれば,異なる分類群どうし(例 えば,昆虫と脊椎動物)を比較し,それらの構造が満 たす共通原理を探ることや,多様化や複雑化の進化を 支配する一般法則が理解できる. 本稿では,表現型のシステム論的記述をめざした筆 者の取り組みを解説する.最初に,フレームワークと して多要素構造を解説する.次に,表現型の要素とは 何かについて解説する.また,要素間の相互作用を 調べた研究例を簡単に紹介する.さらに,表現型進 化での要素の組立順序について解説する.ここでは, 系統比較法という形質進化を系統樹上の確率過程と みなした数理を説明する.これを枯葉に擬態した蝶 の模様が出現する過程に実際に適用して解析した例を 説明する.最後に,今後の展開について簡単に議論し たい.
Cite
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SUZUKI, T. K. (2021). Biological Physics in Phenotypic Systems of Living Organisms. Seibutsu Butsuri, 61(1), 031–035. https://doi.org/10.2142/biophys.61.031
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