Abstract
はじめに 非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)の主体はメタボリッ クシンドロームの肝臓における表現型であり, 非 ア ル コ ー ル 性 脂 肪 肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL) から非アルコール性脂肪肝炎 (non-alcoholic steatohepatitis:NASH) として肝硬変・ 肝癌へと進行する広範な肝病態を包括する疾患 概念である.NAFLDは,他の生活習慣病と同様 に,遺伝的素因に加えて生活習慣などの環境因 子によるエピジェネティック制御が組み合わ さって発症すると考えられる. NAFLDは従来, 肝 細胞への脂肪沈着を生じる第一段階と炎症・線 維化が進展する第二段階に区分する, いわゆる two-hit theoryで説明されてきたが, 実際にはこ れらのステップは不可分であり, 近年は多因子 が同時並行で病態形成に関与するmultiple-parallel hit hypothesisがより広く受け入れられている 1) . 本稿ではNAFLDの病因と病態について, 遺伝的 背景, エピジェネシスおよび代謝病態と臓器障 害のメカニズムの観点から概説する. 1.NAFLDの病因 NAFLDの多くは肥満,耐糖能異常,脂質異常 症,高血圧などと密接な関連があり,インスリ ン抵抗性を基盤としたメタボリックシンドロー ムの肝病変と位置付けることが出来る.また, インスリン抵抗性が関与する内分泌異常や下垂 体手術術後状態としてのNAFLDが知られている ( 表 ) . 一 方, イ ン ス リ ン 抵 抗 性 を 伴 わ な い NAFLDも存在し,飢餓によるクワシオコルや, 脂肪酸β酸化障害,VLDL(very low density lipo-protein)合成・分泌異常,消化管・胆膵外科手 術後などの特殊な病態に加え,薬物で惹起され NAFLDの複雑な病因と病態 要 旨 池嶋 健一 非アルコール性脂肪性肝疾患 (non-alcoholoic fatty liver disease:NAFLD) は,非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)および進 行性の肝疾患である非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohep-atitis:NASH)を含む,メタボリックシンドロームの肝病態として注目さ れている.NAFLDはインスリン抵抗性を基盤とした糖脂質代謝の変化に 伴い,肝細胞の脂肪化および組織障害を来すが,その病態には遺伝的素 因,エピジェネティック制御機構や遊離脂肪酸の脂肪毒性に加え,腸内細 菌叢のバランスや自然免疫系などが関与している. 〔日内会誌 105:15~24,2016〕
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Ikejima, K. (2016). II. Complexity in Pathogenesis of Nonalcoholic Fatty Liver Disease. Nihon Naika Gakkai Zasshi, 105(1), 15–24. https://doi.org/10.2169/naika.105.15
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