Abstract
キーワード Oryza sativa L.,品種育成,低カドミウム,突然変異育種,コシヒカリ 1.育成の背景 カドミウム(Cd)は自然界に普遍的に存在する元素で ある.人が食品を通じて,一定量を超える Cd を長年に わたり摂取し続けると,腎機能障害等健康への悪影響の 可能性がある.食品安全委員会は,疫学調査の結果から 食品由来の Cd 耐容摂取量を 7 μg/kg 体重/週と評価した (食品安全委員会 2010) .2007 年,日本人が食品から摂取 する平均的な Cd 量は,耐容摂取量の約 40%であるが, その 37.2%がコメ類由来であり,コメに含まれる Cd 濃度 を低減することは,日本人の Cd 摂取量の低減に直接寄 与する(食品安全委員会 2010) . 一方で我が国には,過去の産業活動の結果として比較 的土壌 Cd 濃度の高い水田が存在する(浅見 2001,農林 水産省消費・安全局 2011) .コメ中の Cd 濃度の規格基準 (以下,Cd 基準値)が玄米および精米で 0.4 mg kg −1 以下 と食品衛生法で定められていることから,各産地では生 産された玄米の Cd 濃度に対応し,客土法による土壌浄 化や出穂前後 3 週間の湛水管理等の Cd リスク低減対策 が取り組まれてきた(農林水産省消費・安全局 2011) . しかしながら,それらの方法はコストや用水の確保,効 編集委員:西尾 剛 2017 年 4 月 3 日受領 2017 年 6 月 20 日受理 Correspondence: isatoru@affrc.go.jp 安部 匡と倉俣正人は共同第一著者 果の安定性など生産者や行政への負担も大きく, 「Cd を 吸収しない」もしくは「玄米 Cd 濃度が低い」品種の育 成が望まれていた. これまでイネの Cd 吸収性に関わる研究は,主に自然 変異に着目し進められており,Arao and Ae(2003)は, 玄米 Cd 濃度に品種間差異が存在し,日本型品種はイン ド型品種に比較して玄米 Cd 濃度が低いことを報告して いる.また,同報告において日本型品種よりも玄米 Cd 濃度が低かったアフリカ原産の日本型陸稲品種「LAC23」 と「コシヒカリ」の染色体部分置換系統群を用いた遺伝 解析の結果, 「コシヒカリ」の玄米 Cd 濃度を半減する 「LAC23」由来の染色体領域が検出されている(Abe et al. 2013) .しかしながら,我が国の多様な土壌種と栽培環境 において安定して低 Cd 形質を呈する実用品種の育成に は,Cd 吸収量がさらに低い育種素材の探索が必要であっ た. このような状況に対応して著者らは,我が国の主力品 種である「コシヒカリ」を原品種に突然変異育種法を用 いて玄米 Cd 濃度が極めて低い実用品種の開発を進めて きた.本報では,その成果として育成した Cd 極低吸収 品種「コシヒカリ環 1 号」について,育成経過と特性に ついて報告する.
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Abe, T., Kuramata, M., Igura, M., Arao, T., Makino, T., Sunohara, Y., … Ishikawa, S. (2017). “Koshihikari Kan No. 1”, a new rice variety with nearly cadmium-free in grains. Breeding Research, 19(3), 109–115. https://doi.org/10.1270/jsbbr.19.109
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