Abstract
Research on biological control of plant diseases: Present state and perspective 生物防除研究とは「生物を用いて病 原菌の感染密度または病気を引き起こ す活性を減少させること」を目指した ものである (Baker and Cook, 1974) . 特 に, 「フィールドでみられる生物防除 の現象を取り入れ,解析し,その機構 を生産現場へ応用する」研究に主眼が 置かれている.生物防除剤(微生物農薬)を用いるメリット には,①農薬使用回数にカウントされない,②薬剤耐性菌, 耐性虫が発生しにくい,③対難防除病害の突破口となるなど があるが,これらは 2006 年の食品衛生法改正に伴う農薬総 使用回数の規定,薬剤耐性菌・耐性虫の発生,および土壌病 害などの難防除病害対策,といった現在直面している課題を 解決する役割を担っている. 日本で農薬登録された微生物農薬は 2010 年段階で 26 剤あ るが,その内訳は,細菌製剤が 15 剤,糸状菌製剤が 10 剤, ウイルス製剤が 1 剤となっている.細菌では Bacillus や Pseudomonas,糸状菌では Trichoderma や Talaromyces,ウイ ルスでは弱毒ウイルスが主に用いられている.これら微生物 農薬は,ほとんどがここ 10 年の内に開発されてきている. 害虫を対象とした天敵製剤と病害を対象にした微生物防 除剤の,日本における 1997 年から 2006 年の売り上げを比較 すると,天敵製剤は 3 倍に伸びているが,微生物防除剤は 15 倍にまで伸びており,微生物防除剤の利用が近年急速に広 まっていることが分かる. 生物防除研究は,基礎研究として①生物防除エージェント (biological control agent: BCA)の探索,② BCA の活性増強・ 安定化,および③防除機構の解析,があり,応用研究として ①製剤技術の開発や②防除体系の確立,があるなど,研究の 宝庫である. 微生物を利用した防除戦略には,①生物防除エージェント となる特定の有用微生物を分離・同定しそれを単独で人為的 に導入する方法と,②集団としての理想的な有用微生物群集 を作り出す環境条件を整える方法,の大きく 2 つがある.そ れらは,いずれも単独あるいは集団で,病原菌を直接的に防 除したり,あるいは間接的に植物に抵抗性を誘導したりする 戦略である. ここでは,①植物プロバイオティクスの利用,②発病抑止 機構解明の足がかりとなるメタゲノム解析,および③次世代 の全身獲得抵抗性(transgenerational systemic acquired resistance: transgenerational SAR) ,の 3 つのトピック,中でも① の植物プロバイオティクスの利用を中心に取り上げて,生物 防除研究の現状と展望を紹介したい. 1.植物プロバイオティクスの利用 最近,プロバイオティクスという言葉がよく使われてい る.この言葉は,主に人間や動物が摂取することで健康を促 進させる微生物に対して使われている.同じような意味合い で,植物プロバイオティクスという言葉が使われ始めてい る.これは,植物の生育を促進するとともに病気を防ぐ植物 に内生性の有用微生物に対して使われている.植物に内生す る有用微生物は,優占して植物体に定着できるため,高い競 合・拮抗能を持っており,また,植物との高い親和性により, 効果の持続性・安定性が期待されている. 植物との親和性が高い微生物が持つ能力には,例えば,① 葉のワックス面への定着能や,②根毛でのバイオフィルム形 成能があり,これらは紫外線・雨・温度などに対する環境ス トレス耐性や,毒素耐性や毒素分解能,免疫応答の制御能な ど,有害生物によりもたらされる各種のストレス耐性を,植 物に付与する. 植物との親和性が高く,植物プロバイオティクスとして用 いられる微生物としては,植物生育促進菌類(plant growth † 平成 25 年 3 月 27 日 平成 25 年度大会で行われた会長講演の要旨の和文版
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HYAKUMACHI, M. (2013). Research on biological control of plant diseases: Present state and perspective. Japanese Journal of Phytopathology, 79(3), 123–127. https://doi.org/10.3186/jjphytopath.79.123
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