Abstract
1 .はじめに 電気分解は,液体に電気を通ずることにより陰極で還元反 応,陽極で酸化反応を起こし,新たな物質を作ることができ る興味深い方法である。特に陽極での酸化反応では,不安定 なため通常存在比率が小さな過酸化物を電気エネルギーによ り生成することができる。例えば硫酸溶液ならば硫酸から H SO または H S O といった過硫酸 (過酸化物) を生成でき る。他には,過酢酸,過ホウ酸,過炭酸,過リン酸,過塩素 酸等がある。 過硫酸には,上述のように H SO と H S O といった 2 種 類の過酸化物があり,H SO をペルオキソ一硫酸,H S O を ペルオキソ二硫酸と呼ぶ。ペルオキソ一硫酸は発見者である ドイツ人化学者ハインリッヒ・カロの名にちなんでカロ酸と も呼ばれる が,ペルオキソ二硫酸には俗称がない。よって, 本解説では,便宜的にペルオキソ一硫酸をカロ酸,ペルオキ ソ二硫酸を過硫酸と呼ぶ。 過硫酸塩類 (過硫酸アンモニウム,過硫酸ナトリウム,過 硫酸カリウム等) は合成樹脂重合触媒 (ラジカル開始剤) ,プ リント配線基板エッチング剤,漂白剤,金属の表面処理剤, 糊抜剤等の幅広い分野に用いられている , 。一方カロ酸は 半導体回路製造過程でフォトレジスト除去剤等有機物除去薬 剤として広く使用されている。半導体回路製造過程では,そ の回路上に,微粒子,金属成分,有機成分が残留すると半導 体の性能を低下させたり,生産上の歩留低下を引き起こすた め,金属イオンを含む上記過硫酸塩を使用することができな い。よって,硫酸と過酸化水素水を混合 (Sulfuric acid and hydrogen Peroxide Mixture,以下 SPM) して発生させることが できるカロ酸が使用されている。 ウエハ洗浄機の 1 つである枚葉洗浄機では薬液を使い捨て るため,SPM に何ら不都合はないが,バッチ洗浄機等薬液 を循環利用する系では,カロ酸を発生させるためにバッチ処 理毎に過酸化水素水を追加添加しなければならない。洗浄液 の硫酸濃度が徐々に低下し,それに伴いフォトレジスト除去 能力も徐々に低下する。その結果,所望のフォトレジスト除 去能力が得られなくなると新しい洗浄液を調製する。 半導体製造においては, 製造条件 (硫酸濃度, 酸化剤濃度等) が常に一定であることが望まれる中,この SPM では常に洗 浄条件 (=製造条件) が変化していること,また溶液寿命が短 く産廃量が多いことから,この工程の改善が望まれてきた。 日本の代表的半導体メーカーである㈱東芝は,SPM の代替 技術として SOM(Sulfuric acid and Ozone Mixture,硫酸溶液 中にオゾンガスを溶解させた溶液) について独自に検討した 実績がある , 。 一方,硫酸を電解することにより,過硫酸が生成されるこ とは知られていた。 ホウ素をドープしたダイヤモンド電極 (以 下 D 電極) の製造方法及びその利用に最初に手掛けたのは米 国コダック社で,有機廃液の処理に適用しようとした 。そ の後住友電気工業や神戸製鋼所等が参加した D 電極製造の 国プロジェクトが行われた。また D 電極を用いて硫酸を電 気分解しようとしたのはおそらく東海大学の N. Katsuki 氏ら が最初ではないだろうか。その後多くの方々によって電解硫 酸の研究開発及び実用化が試みられたが,実際の工業に適用 するには幾つかの課題があり,実用に至っていない。しかし, 過硫酸の酸化還元電位は 2.01 V と高く,これは半導体のみ ならず利用すべき分野があると期待されるため,栗田工業で は,硫酸を電気分解して得られる過硫酸を種々の工業に適用 できないか取り組んでいる。その中でシリコンウエハの洗浄 において幾つかの適用例及び適用のため現在技術開発してい る例について紹介する。 2 .SPM v.s. 電解硫酸 電解硫酸とは文字通り硫酸溶液を電気分解することである。 硫酸を電解すると,式 (1) 及び (2) に示すように,硫酸イオンま たは硫酸水素イオンが電子を放出して過硫酸 (H S O ) となる。 2SO →S O +2e ………………………………(1) 2HSO →2H +S O +2e ………………………(2) Balej ら は白金電極を用いた電解法で反応機構を詳しく 調 べ て い る。 硫 酸 濃 度 を 1 mol/L(9 wt%)か ら 13 mol/L (76 wt%) まで変化させているが,過硫酸の生成効率が良い シリコンウエハへの電解硫酸の利用 永 井 達 夫 a a
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NAGAI, T. (2016). Application of Electrolyzed Sulfuric Acid for Cleaning Silicon Wafers. Journal of the Surface Finishing Society of Japan, 67(8), 421–426. https://doi.org/10.4139/sfj.67.421
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