Abstract
これまでの連載企画: 「対称性と群論」 1)-3) で,ヘルマ ン・モーガン記号(国際記号) ,空間群の分類およびミ ラー指数を解読した.今回は部分群を紹介する.部分群 の理解は,結晶構造の類似性や変化に関して幅広い応 用のある概念だが,それを説明するためにまずはいくつ かの基礎概念を導入する必要がある. G をある群だとする.G の元(element) *1 の数を位数 (order)といい, |G|という記号で示す.点群は有限群で あるのに対して,空間群は無限群である.なぜならば, 無限個の並進操作を含むからである. G の一部の元を選択し,これらの元がまた群を形成す るなら H は G の部分群である.そして,G と H の位数の 比を|G|/ |H|と表示し,これを指数(index)という. 対称操作の行列表現を簡単に表示するためにサイズ記 号(Seitz symbol)が便利である.サイズ記号 { W|w } は, 線型部分 W と並進部分 w でできている.例えば,0, y, ¼ を通る [010] 方向に平行な 2 回螺旋操作は,行列・ベク トルペアまたはサイズ記号で以下のとおり示すことがで きる. 1 0 0 0 1 0 0 0 1 0 2 0 1 2 1 2 010 1 2 1 2 { } ; | 以下,サイズ記号を利用する. 1.点群の部分群.剰余類,部分群の分類 G をある点群そして H をその部分群とし,G を H を用 いて分割すると|G|/ |H|個の集合が得られる.その 1 つは H そのもので,残りの (|G|/ |H|-1) 個の集合は群ではな い.なぜならば,1)恒等操作は H にしか属しない;2) H 以外の集合は内部算法が成り立たないからである.各集 合の元の数は|H|と同じで,基数(cardinality) という. *2 そしてこれら集合は剰余類(傍系,coset)と呼称する. 具体的な例を示そう.4mm の点群の位数は 8 であり, 以下の元で形成されている. 4mm = { 1, 4 1 [001] , 4 2 [001] =2 [001] , 4 3 [001] = 4-1 [001] , m [100] , m [010] , m [110] , m [110] }. そして点群 4mm に関しては,指数 2 (位数 4) の部分群 が 3 つ存在する. ① { 1, 4 1 [001] , 4 2 [001] =2 [001] , 4 3 [001] = 4-1 [001] } = 4 ② { 1, 4 2 [001] = 2 [001] , m [100] , m [010] } = 2mm. ③ { 1, 4 2 [001] = 2 [001] , m [110] , m [110] } = 2.mm ②と③は同様な対称操作で形成されているが,一部の 幾何的要素は一致しない.4mm から 2mm に対称性が低 下すると,格子の対称方向も 5 本( 正方晶系 )から 3 本 (直方 (斜方) 晶系)となる.しかし, (hk0) 面内に残存す る対称方向は正方の 〈100〉方向か正方の 〈110〉の 2 つの 可能性があるため,直方 (斜方) の軸を利用し点群のヘル マン・モーガン記号を書き直すと,対称性の低下による 残存する鏡映面を同定しづらくなる.そのために,ここ では軸の変換をせずに,残存しない鏡映面をドット (. ) で表示し,2mm. と 2.mm という記号を利用する.この 2 つの点群は同一ではなく,同型群(isomorphic group)で あり,同じ点群タイプに属する. 演習問題 1 422 という点群から指数 2 の部分群を導き, 点群タイプで分類せよ. さらに,指数 4(位数 2)の部分群は 5 つ存在する. ① 2= { 1, 4 2 [001] = 2 [001] } ,② .m.= { 1, m [100] } , ③ .m.= { 1, m [010] } ,④ ..m= { 1, m [110] } ,⑤ ..m= { 1, m [110] }. * 1 著者によって群の element は 「元」 か 「要素」 と呼ばれている. 結晶学では「要素」はすでに別の意味(幾何的要素,対称要 素:文献 1) を参照) で使われている.混乱を避けるためにこ こでは「元」を利用する. * 2 「位数」という語彙は群の元の数を表す.群を形成しない集 合の場合は「位数」を利用せず, 「基数」という.英語では剰 余類の基数は 「length of the coset」 という表現が一般に利用さ れている. 演習問題の解答は J-Stage に付録として掲載してあります.
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NESPOLO, M. (2017). Subgroups of Point and Space Groups. Nihon Kessho Gakkaishi, 59(5), 210–222. https://doi.org/10.5940/jcrsj.59.210
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