Abstract
はじめに 肥厚性硬膜炎(hypertrophic pachymeningitis:HP) は,慢性炎症により脳や脊髄の硬膜に部分的あるいはび まん性な肥厚を認める疾患である 1~4) .本邦の有病率は 人口 10 万人あたり 0.949 の希少疾患である 5) .歴史を顧 みれば,19 世紀後半の Charcot らによる記載に始まり (Fig. 1) 1,4) ,近年の神経学をはじめとした現代医学の進 歩により疾患概念が確立されつつある疾患である.HP は脳硬膜だけでなく,背部痛やしびれ感を主訴とし,脊 髄硬膜にも病変を認めることがあるため,脊髄外科医が 遭遇することもある 6~8) .本稿では,HP の包括的な疾患 概念,分類・原因,治療を述べた後,spinal HP に焦点を 当て紹介する. 肥厚性硬膜炎の分類 髄膜に炎症をきたす疾患には,1)硬膜炎(pachyminin-gitis) ,2)くも膜炎(arachnoiditis) ,3)軟膜炎(lepto-meningitis)がある.通常,髄膜炎と呼ばれるのは軟膜 炎であるが,くも膜にも炎症が及ぶことが多い.硬膜炎 も同様に,くも膜や軟膜へ炎症が及ぶことがある 2,4,9) . HP は形成される部位により,1)cranial HP と 2)spi-nal HP に分類される.Cranial HP が多いが,ときに spinal HP を経験することがある(Fig. 2) . HP は原因により,1)原因が明らかでない特発性 HP と,2)全身疾患に伴い発症する続発性 HP に大別される (Table 1) .続発性では,2-1)感染性 HP(梅毒,結核, 真菌など) ,2-2)免疫介在性 HP(多発血管炎性肉芽腫 症〔granulomatosis with polyangiitis:GPA〕をはじめと した抗好中球細胞質抗体〔anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA〕関連疾患〔ANCA-associated vasculi-tis:AAV〕 ,サルコイドーシス,関節リウマチ,IgG4 関 連疾患〔IgG4-related disease:IgG4RD〕 )などに分類さ れる.Charcot らの時代から 20 世紀前半までは梅毒をは じめとした感染性 HP が多かったが 1,10) ,近年の報告の多 くは免疫介在性 HP である 2,5) .なお,脳脊髄液減少症や 腫瘍性疾患(悪性リンパ腫,転移性脳・脊髄腫瘍など)で も MRI 検査で異常な造影を伴う硬膜肥厚を認めることが あるため,HP との鑑別には注意を要する (Table 1) 2~4) .
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Nakajima, A., & Kawachi, I. (2020). Diagnosis and Treatments of Hypertrophic Pachymeningitis. Spinal Surgery, 34(1), 25–31. https://doi.org/10.2531/spinalsurg.34.25
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