1 .はじめに 粘着テープの粘着強さは,被着体の表面にどれだけ濡れ広 がっているかという界面の密着性と,引き剥がしに対して抵 抗するための粘着剤自身の凝集力の 2 つの因子に依存してい る , 。粘着強さに対して界面の密着性と凝集力は掛け算で 効いており,片方が 0 になると粘着強さは 0 になる。 著者ら は,粘着強さを向上させるためにこれら 2 つ の因子をいかにコントロールすべきか,また,界面の密着性 と凝集力の個々の評価方法の開発等を目的とした一連の研究 を行っている。本稿では,これらから得られた粘着強さと密 着性の関係について解説する。 2 .界面の密着性の寄与を知るには? 粘着強さへの界面の密着性と凝集力の相対的な寄与を評価 するために,著者らは以下のような検討を行った , 。 モデル粘着剤は,ソフトなポリアクリル酸ブチル (PBA) と ハードなポリメタクリル酸メチル (PMMA) から成るアクリ ル 系 ト リ ブ ロ ッ ク コ ポ リ マ ー (MAM,PMMA 含 有 量: 23 wt%,重量平均分子量 M w :80,000) とした。この易動性を 向上させるため,同じ成分から成るアクリル系ジブロックコ ポ リ マ ー (MA,PMMA 含 有 量:6.3 wt%,M w :86,000) , あ るいは PBA オリゴマー (OLI,M w :3000) を添加した。それ ぞ れ MAM,MAM/MA(7/3,w/w)お よ び MAM/OLI (8/2, w/w) と 呼 び, こ れ ら の PMMA 含 有 量 は 18 wt% で あ る。 MAM の PBA ブロックの分子運動性は,両末端の PMMA ブ ロックにより拘束されているが,MA の PBA ブロックは片 末端がフリーであるために自由度がより高い。OLI は両末端 がフリーで,しかも低分子量であるので,分子運動性はさら に高いはずである。 図 1 は,モデル粘着剤単独の動的粘弾性測定による貯蔵弾 性率 (E′ ) の温度依存性である。-50 ℃付近の E′ の急激な低 下は PBA のガラス転移温度 (T g ) に基づく。これ以上の温度 で E′ が温度にともなって緩やかに低下する部分をゴム状平 坦領域という。この部分の E′ は MAM > MAM/MA ≈ MAM/ OLI であった。 図 2 は,モデル粘着剤単独の引張試験による応力-歪曲線 で あ る。 破 断 応 力, 破 断 伸 度 と も に MAM>MAM/MA ≈ MAM/OLI であった。図 1,図 2 の結果から,モデル粘着剤 の凝集力は MAM>MAM/MA ≈ MAM/OLI であると推定され る。 粘着特性は「タック」で評価した。タックとは「ごく軽く 粘着テープの接着強さと界面の密着性 中村 吉伸 a ,山村 和広 a ,藤井 秀司 a a
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NAKAMURA, Y., YAMAMURA, K., & FUJII, S. (2012). Adhesion Strength and Interfacial Adhesion of Pressure-Sensitive Adhesive. Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 63(12), 728–732. https://doi.org/10.4139/sfj.63.728
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