Abstract
本稿の目的は, 大阪市の被差別部落A地区で実施した調査に基づき, この地域の再不安定化プロセスとその要因について検討することを通して, 貧困や社会的排除現象の解明と対応策の構想に, 地域という変数が欠かせないことを示すことである. 貧困と社会的排除が極端に集中していたA地区の状況は, 長期にわたる公的な社会的包摂事業によって大きく改善した. しかし, 事業終結後, アファーマティブ・アクションとしての公務員就労ルートが廃止され, その時期が日本社会の雇用不安定化の時期と重なっていたこともあり, 若者の就業状態はふたたび不安定化した. 安定層の地区外流出と不安定層の流入という貧困のポンプ現象がこうした傾向に拍車をかけた. 貧困層の集積は, それ自体がさらなる機会の制約となる. 被差別部落では, かねてから貧困が地域的に集積していたことによる履歴効果, そして当事者運動が引き出した公的事業の意図せざる帰結として, 個的な生活向上・維持戦略の定着を阻む生活文化が存在し, 達成モデルも限定されてきた. 地区内の「なんとかやり過ごす」ネットワークは事業終結と担い手の流出によりその機能を弱体化させている. 貧困・社会的排除は地域的に集積し, 地域的に集積したそれらはマクロな社会変動や政策, さらには階層・階級文化などには回収されない固有の機制として, 貧困のさらなる集積や深化をもたらしていく.
Cite
CITATION STYLE
TSUMAKI, S. (2012). Local Manifestation of Poverty and Social Exclusion. Japanese Sociological Review, 62(4), 489–503. https://doi.org/10.4057/jsr.62.489
Register to see more suggestions
Mendeley helps you to discover research relevant for your work.