Abstract
1 .はじめに 電気めっきは,現在では半導体工学,エネルギー工学など 現代科学の様々な分野の先端を支える重要な技術となってい る。1998 年の IBM によるダマシン法の発表以来,LSI 配線の 作成技術はドライプロセスによるアルミの配線から電気めっ きによる銅配線への移行が進んでいる 。半導体チップの高 集積化の鍵となる 3 次元実装技術のためのシリコン貫通電極 (Through Silicon Via,TSV) は,チップ間を貫通する高アスペ クト比の微細な孔を電気銅めっきで充填するものである , 。 また,Li 2 次電池をはじめ,ハイブリッド車などのエネルギー 分野においても,その中枢部分の隠れたところでめっきは不 可欠な技術となっている。 工学におけるめっきの利用は多岐にわたっており,応用の 幅が拡大するにつれて,複数の添加剤の利用や電流波形の制 御などめっきに要求される条件は複雑なものとなっている。 したがって,用途に応じた最適なめっき条件の探索にコン ピュータシミュレーションは不可欠の研究手段となっている。 シミュレーションによるめっきの研究は 60 年代から始まっ ており,連続体モデルによる電流分布の解析が行われてきた。 これは電流密度やイオン濃度などの物理量を連続変数として 扱い,それを記述する微分方程式を数値解析するものである。 すなわち,ポテンシャルに対するラプラス方程式,イオンや 添加剤の濃度に対する拡散方程式,撹拌など流体力学的な流 れに対するナビエ-ストークス方程式などを連立させて数値 計算を行う。電極反応はこれらの方程式の境界条件としてモ デルに組み込まれる。連続体モデルは,有限要素法などの数 値解析法が確立しているため数値計算ソフトが充実しており, 広く利用されている † 1 。連続体モデルによる解析は,巨視的 な系,すなわちめっきされる対象がおよそ数十 μm 以上のス ケールの場合に有効である。しかし,上で述べたような最先 端の半導体工学では,電子デバイスの小型化によりめっきさ れる対象も微細化の一途をたどり,数 μm から nm スケール † 1 電流分布の解析ソフトについては,本小特集の小原勝彦氏の解 説を参照されたい。 の領域へのめっきが必要とされている。したがって,その解 析方法は連続体モデルではなく原子・分子を直接粒子として 扱う方法が必要となっている。 動的モンテカルロ法 (Kinetic Monte Carlo,KMC 法) は,統 計力学と確率過程論を基礎とした,多くの事象を含む多体系 の時間発展の解析手段である 。KMC 法はそれぞれの事象 に対して,それが生じる頻度 (遷移確率) を設定し,乱数を用 いてその頻度に従う時間発展をシミュレーションする方法で あり,物理・化学・工学の広い分野で利用されている。めっ きにおいては,電極表面での電気化学反応や結晶成長過程, 添加剤の作用の原子スケールでの解析に有力な研究手段とな る。本稿では,KMC 法の基礎事項からめっき分野における 最近の応用例について解説する。次章において,KMC 法の 基本設定とアルゴリズム,代表的な結晶成長モデルについて 述べる。3 章では, 電気銅めっきを例にとり KMC シミュレー ションの研究例を紹介する。まず,KMC 法と連続体モデル のハイブリッドモデルについて述べ ,次に溶液に粒子モ デルを用いた Solid-by-Solid モデルによるトレンチフィリン グのシミュレーションをとり上げる 。4 章では,まとめ と今後の展望について述べる。 2 .KMC 法の基礎 2.1 基本設定 1 章で述べたように,KMC 法は主として多粒子系の時間 発展を,乱数を用いて計算する手法である。シミュレーショ ンの基本設定としていくつかの事象の組みを考え,各事象に 対する遷移確率を設定する。結晶成長を例にとって説明しよ う。図 1 は,結晶成長の格子モデルの模式図である。結晶は 正方格子とし,格子点 (□) は原子を表し,事象として原子の 吸着,離脱,表面拡散を考える。 (めっきの場合,吸着は金 属の還元反応,離脱は酸化反応に対応する。 ) それぞれの遷移 確率を,k n ,k n ,k nm とする。事象の起こる確率は,原子の いる環境に依存するはずであり,ここでは最近接原子数 (ボ ンド数)n に依存するとしている。表面拡散の場合,n,m は, 移動前と移動後のサイトにおけるボンド数である。例えば, 動的モンテカルロ法によるめっきシミュレーションの新展開 金 子 豊 a a 京都大学 大学院情報学研究科 (〒 606-8501 京都府京都市左京吉田本町)
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KANEKO, Y. (2013). Recent Development of Kinetic Monte Carlo Simulation for Electrodeposition. Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 64(10), 531–536. https://doi.org/10.4139/sfj.64.531
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